虫歯に侵された場合、患部の歯の神経を抜く「根管治療」を処置します。治療の過程で歯に詰め物や被せ物を装着しますが、被せ物には保険適用のものから実費治療のものまで、さまざまな種類があります。
この記事では、被せ物の種類や値段、被せ物をする理由、被せ物を長持ちさせるケア方法などについてご紹介します。
被せ物の種類と値段の相場
「ブリッジ」とも呼ばれる被せ物は、根管治療だけでなく、インプラントや入れ歯でも使われます。
被せ物は保険適用と自費治療のものがあり、それぞれの特徴や一般的な治療費の相場についてご紹介します。
硬質レジンジャケット冠
硬質レジンジャケット冠は、歯全体を硬質レジンで覆った被せ物です。保険適用があるため、治療費は1本あたり約4,000円~7,000円程度で受けられます。
【メリット】
- 歯の色に近いため、自然な仕上がり
- 金属アレルギーのリスクがない
【デメリット】
- 長期間使用すると色が変わりやすい
- 歯肉に炎症が起こることがある
- 削る量が多くなりがち
硬質レジンジャケット冠は、歯になじみやすく、アレルギーの心配がない一方で、経年劣化による変色や歯肉の腫れに注意が必要です。
保険適用範囲は前歯や小臼歯、犬歯に限られ、奥歯には使用できません。
硬質レジン前装冠
硬質レジン前装冠は、金銀パラジウム合金にレジンを表面に盛りつけた被せ物で、1本あたり約5,000~8,000円で治療可能です。
【メリット】
- 強度が高く、耐久性がある
- 自然な色合いでほかの歯になじむ
【デメリット】
- 裏面に金属が見える
- 飲食によって変色する可能性がある
- 金属アレルギーを引き起こす場合がある
硬質レジン前装冠は、見た目がよく強度も優れています。しかし裏側に金属が見える点や金属アレルギーを引き起こすリスクがデメリットです。
保険が適用される範囲は前歯、小臼歯、犬歯までとなります。
CAD/CAM冠
CAD/CAM冠はプラスチック素材を使用した白い被せ物で、金属アレルギーの心配がありません。料金は6,000円前後と、安価で白い歯を作れるため人気です。
【メリット】
- 金属アレルギーのリスクがない
- 比較的低価格で白い歯を作れる
【デメリット】
- プラスチック素材のため、耐久性に欠ける
- 歯ぎしりや食いしばりがあると割れやすい
CAD/CAM冠は保険診療に適応されるものの、耐久性が低いため歯ぎしりや強い噛む力がある方には向いていません。
また、患者さんの症状によっては適用できる場合とできない場合があるため、事前に確認が必要です。
銀歯
銀歯は金属製の被せ物で、1本約4,000~6,000円で治療できます。奥歯の治療に多く使用され、強度があり、長期間の使用に耐える特徴があります。
【メリット】
- 強度が高く、割れにくい
- 噛む力をしっかり回復できる
【デメリット】
- 見た目が悪い
- 金属アレルギーを引き起こす可能性がある
- 虫歯が再発しやすい
銀歯は頑丈さが魅力ですが、素材の関係から金属アレルギーや見た目の問題がデメリットとして挙げられます。
また、銀歯と歯の間に隙間ができやすく、虫歯が再発しやすい点にも注意が必要です。
ジルコニアセラミック
ジルコニアセラミックは、非常に強度と耐久性に優れた材質で、保険適用外となり費用相場は約80,000~150,000円です。
【メリット】
- 強度が高く、奥歯にも使用可能
- 金属アレルギーを引き起こさない
- 歯垢がつきにくい
【デメリット】
- 色のバリエーションが少ない
ジルコニアセラミックは強度に優れており、奥歯にも使用可能です。また、金属アレルギーの心配がなく、汚れがつきにくいため、長期間清潔に保てます。
色に関しては、ほかのセラミックよりもバリエーションが少ない点がデメリットです。
メタルボンドセラミック
メタルボンドセラミックは、内側が金属で外側がセラミックの被せ物で、費用相場は約80,000~150,000円です。
【メリット】
- 強度が高く、長期間使用できる
- 見た目が美しく、自然に見える
【デメリット】
- 金属アレルギーのリスクがある
- オールセラミックに比べて色がやや不自然
- 裏側に金属が見える可能性がある
メタルボンドセラミックは、非常に強度が高く、見た目にも優れていますが、内側が金属であるため、金属アレルギーを引き起こすリスクがあり、色の自然さが少し劣る点がデメリットです。
ハイブリッドセラミック
ハイブリッドセラミックは、レジンにセラミック粉末を混ぜた素材で、費用相場は約40,000~80,000円です。
【メリット】
- 自然な色調に仕上げられる
- セラミックよりも安価で治療できる
- 変色しにくい
【デメリット】
- 透明感がほかのセラミックに比べて劣る
- 長期間使用すると変色の可能性がある
ハイブリッドセラミックは、コストパフォーマンスに優れ、自然な見た目が実現できる特徴があります。
一方で、セラミック素材に比べて透明感に劣り、長期間使用すると変色することがあるため、使用する部位には工夫が必要です。
ゴールド
ゴールドは金合金や白金加金を使った被せ物で、価格は約150,000円です。金歯としても知られ、保険適用外です。
【メリット】
- 金属が溶け出しにくく、耐食性に優れる
- 金属アレルギーのリスクが低い
【デメリット】
- 目立ちやすい
- 熱伝導性が高い
ゴールドは金属アレルギーのリスクが低く、耐久性も高いですが、金の光沢が目立つため見た目を気にする人には不向きです。
また、金属特有の熱伝導性が高いため、冷たい飲食物がしみることがあります。
神経を抜いた歯に被せ物をする理由とは?
歯の健康と機能を維持するために重要な要素であり、被せものをすることでさまざまな利点を得られます。
ここでは、歯に被せ物をする理由を4つの観点から紹介します。
歯の強度を保つため
神経を失った歯は血流が途絶えることで乾燥し、脆くなりやすいです。
特に、虫歯や外傷でダメージを負った歯は脆くなるため、噛む力や外部からの衝撃を受けると破損するリスクが高まります。
被せ物(クラウン)は、歯を全面的に覆い、外部からの圧力を均等に分散させることで歯の保護をする特徴があります。これにより歯が割れ、欠けてしまうリスクが減少し、強度が維持されます。
特に奥歯などの強い噛みしめが必要な部位には、被せ物をすることで耐久性が高まり、歯を長持ちさせることができます。
噛む機能を回復させるため
神経を失った歯は、虫歯や外傷によって削られることが多く、歯の形状や大きさが変わることがあります。
大きく削られた歯は、噛む力を適切に分散できなくなるため、食事の際に不便を感じることが増えるでしょう。被せ物を装着することで、元の形状や機能が復元され、噛む力が効率的に分散されるようになります。
また、被せ物は噛み合わせのバランスを保つ効果が期待でき、周りの歯との調和を図りながら正常な噛む機能を回復させます。
細菌の侵入を防ぐため
神経を抜いた歯は、内部が空洞になるため細菌感染のリスクが高くなります。
歯は神経が無くなることで、防御機能が失われ、内部に細菌が入りやすくなり、歯周病といった病気にかかるでしょう。
ただ、クラウンなどの被せ物で歯を完全に覆うことで、細菌が歯の内部に侵入するのを防ぐことができます。そのため、被せ物で歯を保護することが重要です。
また、密閉された環境を維持することで、新たな感染の拡大リスクも低減できます。特に根管治療後に被せ物をすることで、長期的に健康な歯を維持しやすくなるでしょう。
審美性を向上させるため
神経が無くなった歯は変色しやすく、特に前歯などの目立つ部分では審美的に気になるケースがあります。
被せ物は色や形を調整できるため、自然で美しい見た目を実現できます。セラミックやポーセレンのクラウンを用いることで、天然歯に近い色味を再現し、周りの歯と調和した自然な仕上がりになります。
また、被せ物によって着色など変色を防止できるため、口元の美しさを保ち、笑顔に自信を持つことができるでしょう。
神経を抜いた歯の被せ物を長持ちさせるケア方法
神経を抜いた歯に被せ物をする際、長持ちさせることが健康への重要なポイントです。
長持ちさせるためのケア方法を4つのポイントから詳しく解説します。
適切なブラッシングを行う
神経を抜いた歯の被せ物を長持ちさせるためには、適切なブラッシングが欠かせません。
歯の表面に残るプラークは歯周病の原因となり、歯茎や周囲の歯に炎症といった症状を引き起こす可能性があります。これが原因で被せ物が緩み、歯の健康が損なわれるリスクが生じます。
少なくとも1日2回、優しく円を描くように磨き、歯と歯茎の境目を意識して丁寧にブラッシングすることが重要です。
また、毛先が柔らかい歯ブラシを選び、歯茎を傷つけないよう心がけましょう。デンタルフロスや歯間ブラシを使用することでさらに清潔に保てます。
硬いものを避ける
神経を抜いた歯の被せ物は、天然の歯よりも強度が劣ることがあります。特に硬い食べ物を頻繁に噛むと、被せ物に大きな負担がかかり、ひび割れや欠けが発生しやすくなります。
ナッツや氷、キャンディーなどの硬いものは、被せ物を傷つけるリスクを高めるため、できるだけ避けましょう。
どうしても硬い食べ物を食べる必要がある場合は、食べ物を小さく切ってから食べるよう心がけるようにしてください。
また、歯ぎしりの習慣がある方も硬い食べ物を控えることをおすすめします。
歯ぎしりや食いしばりを防止する
歯ぎしりや食いしばりは、神経を抜いた歯と被せ物に強いストレスをかけることがあります。就寝中の無意識な歯ぎしりで、被せ物がひび割れてしまい、外れてしまうことがあるでしょう。
マウスピースを使用することで、歯にかかる圧力を分散させ、歯ぎしりや食いしばりを防止する効果が期待できます。
歯科医師が作成するオーダーメイドのナイトガードを装着することで、歯の負担を軽減します。さらにリラックス方法を取り入れて緊張を和らげるとよいでしょう。
定期的な歯科検診を受ける
神経を抜いた歯は、特に慎重にケアしなければならない部位です。定期的に通院して歯科検診を受けることで、被せ物の状態や歯周病の進行を早期に発見し、適切な対応が取れます。
被せ物が緩み、歯に異常が生じていないかを確認することは、長期間にわたって健康な状態を保つために重要です。
また、歯科医師による専門的なクリーニングを受けることで、歯垢や歯石といった蓄積された汚れが取り除かれ、感染リスクを減らせます。このようなことから定期的な通院は必要で、一般的に半年に一度の回数で歯科検診を受けることが推奨されています。
歯の神経を抜く治療に関するよくある質問
虫歯をはじめ、歯は症状次第では神経を抜き、被せ物をしなければいけないケースがあります。
ここでは、治療の一環で歯の神経を抜く際によくある質問を紹介します。
根管治療は自費と保険ならどっちがいい?
根管治療には保険適用と自費治療(自由診療)があり、それぞれに異なる特徴があります。
保険適用の治療は通常費用を抑えられ、経済的負担が少ないのがメリットです。しかし、使用する材料や治療方法に制限があり、治療の時間が長引くケースがあります。
特に、根管充填材や被せ物の素材が限定した状況で製作されるため、耐久性や見た目において制約があることもあります。
一方で自費治療は高額な治療である反面、より高品質な素材や先進的な治療法を選択できるため、治療精度や審美性の面で高い評価を得やすいです。
根管治療には実費と保険それぞれに特徴を持ち合わせていますが、できるだけ歯を残したいと思う方は、自由診療で根管治療を受けることをおすすめします。
根管治療はしないほうがいいって本当?
根管治療を避けるべきだという意見もありますが、実際には治療を行わないことが歯の健康にとって逆効果になるケースが見受けられます。
歯の神経が感染や虫歯で炎症を起こした場合、そのまま放置すると感染が広がって痛みが増えていき、最悪歯が抜けてしまうリスクがあるため注意が必要です。
根管治療を行うことで、歯の神経を取り除き、歯を保つことができるため、最終的に歯を抜かずに済む可能性が高まります。
もちろん、治療方法や診断によってはほかの選択肢が適していることもありますが、神経がダメージを受けている場合は根管治療が推奨されることが多いです。
ただし、治療後の歯が変色してしまい、完全に元通りに戻らないこともあるため、歯科医師とよく相談し、治療方法を選択することが大切です。
まとめ
根管治療を終えた後は、歯を守るために被せ物をします。被せ物は、保険適用と自費治療のものがあり、それぞれ特有の特徴があります。
歯科治療において特徴や経済状況を考慮するのは重要なことです。ただ、金額は大きくなることや、再治療になる可能性を踏まえると、可能であれば実費治療の選択をおすすめします。
被せ物は歯の寿命に直結する問題のため、慎重に検討する必要があります。
歯の神経を抜く根管治療を検討されている方は、京都市左京区の「京都下鴨ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科」にご相談ください。
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私たちの目標は、患者様の笑顔と口腔の健康を生涯にわたってサポートすることです。最新の医療技術と丁寧な診療で、歯の健康を守り、それぞれのライフステージに合わせた最適な歯科医療を提供いたします。