こんにちは。京都府京都市左京区にある、医療法人社団 京都下鴨ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科です。
歯周組織の再生療法とは、歯周病によって失われた骨などの歯周組織を回復させる治療法です。再生療法にはいくつか種類があり、特徴や費用も異なります。
今回は、再生療法の適応症や治療の流れについて詳しく解説します。
Contents
歯周病とは
歯周病とは、プラーク内に潜む歯周病菌によって引き起こされる感染性炎症性疾患のことです。
歯と歯茎の間にある歯周ポケットに汚れが溜まると、細菌が増殖し、歯茎に炎症が起きます。重度の歯周病になると、歯茎だけにとどまらず歯槽骨まで溶かします。初期の歯周病は自覚症状が現れないため、歯科医院でのクリーニング時や歯茎からの出血など進行してから気付くことが多いでしょう。
歯周病の症状には、以下のようなものがあります。
・歯茎が赤く腫れている
・歯肉がブヨブヨして張りがなくなった
・歯肉から血や膿が出る
・口臭がする
・歯茎が下がり、歯の露出部分が増えた
・歯がグラグラする
歯茎に炎症が起きると、歯肉が赤くなったり腫れたりします。
ただし、痛みはほとんどありません。歯周病が進行して細菌感染が骨まで広がると、歯を支えられなくなり、最終的に歯が抜け落ちます。膿や歯の動揺は、歯周病が相当進行している証拠です。歯が自然に抜け落ちなくても、症状によっては抜歯が必要になることもあるでしょう。歯周病は数年単位で進行し、痛みなどの自覚症状が乏しいため、発覚したときにはすでに重症だったということも珍しくありません。
2018年に行われた永久歯の抜歯原因調査結果によると、日本人が歯を失う原因の1位が歯周病であり、全体の37%を占めていることがわかります。特に中高年で発症した場合、歯を失う確率が高い傾向にあるのです。歯周病は、予防や早期治療が非常に重要な疾患といえるでしょう。
歯周組織の再生療法
歯周組織の再生療法とは、歯周病によって失われた骨や歯根膜を再生する治療法です。治療法には「薬剤を用いる方法」と「人工膜を使う方法」があり、主に以下の3つが挙げられます。
エムドゲイン
エムドゲインとは、豚の歯胚から作られた歯周組織再生材料のことです。「エナメルマトリックス」というタンパク質が主成分であり、歯が生えるときの環境を再現します。エムドゲインを歯根に塗布することで、骨や歯根膜などの歯周組織の再生を促します。エムドゲインの適用条件は、歯周ポケットの深さが6mm以上、幅が2mm以上の垂直性の骨欠損(根分岐部を除く)であることです。
1998年から世界40か国以上で使用されており、日本では2002年に厚生労働省の認可を受けました。20年以上の歴史があり、効果も実証されているため、信頼性の高い治療法といえるでしょう。手術による合併症も少なく、治癒効果も高いといわれています。
ただし、自費診療なので、治療費が高額になるのがデメリットです。
リグロス
リグロスとは、FGF-2(塩基性線維芽細胞増殖因子)というタンパク質を主成分とした歯周組織再生材料です。リグロスには、骨や筋肉などの細胞を増やす作用があり、破壊された歯周組織の再生を促進します。成長因子は細胞の増殖だけでなく、血管を新たに作る作用もあるため、歯茎などの組織も同時に回復させられます。
リグロスは保険適用内で治療が可能になったため、比較的安価で治療が受けられるのがメリットです。エムドゲイン同様、深く狭く骨が失われた場合に適した再生療法といえるでしょう。
リグロスは2001年から皮膚科で使用されていますが、歯科におけるリグロスの実績はまだ浅いのが現状です。
GTR法(Guided Tissue Regeneration)
GTR法は、メンブレンという人工膜を骨の欠損部分に被せ、歯周組織の再生を図る方法です。歯周組織にスペースができると、自然治癒によって歯周組織で埋められていきます。
しかし、再生速度は歯槽骨や歯根膜などの支持組織よりも、歯肉の上皮組織のほうが上回るため、骨などが十分に回復できません。欠損部分にメンブレンを被せることで、上皮組織の侵入を防ぎ、骨や歯根膜の再生を促す方法がGTR法です。GTR法は、広範囲に浅く骨が失われた症例にも対応しているため、エムドゲインやリグロスの適用が難しいと判断された場合でも治療可能なケースが多いでしょう。
人工膜は非吸収性と吸収性があります。非吸収性の場合、歯周組織が再生したあとに人工膜を取り除く必要があるため、手術回数が2回必要です。さらに、人工膜の調整など手術の難易度が高いため、術者の熟練度によって治療効果が左右される治療法です。
再生療法でできること
歯周組織の再生療法によってできることは、以下のとおりです。
・失われた歯槽骨を再生できる
・抜歯を避けられる
・歯周ポケットが改善される
再生療法によって、欠損した歯槽骨を再生することができます。歯槽骨は歯を支える役割があるため、結果的に抜歯が避けられることにつながります。歯周病によって歯茎が下がり歯周ポケットが深くなってしまった場合は、歯周組織の再生により改善が期待できるでしょう。
再生療法の適応症
歯周組織の再生療法は、すべての症例に対応しているわけではなく、適応症があります。適応症を決めるのは、歯槽骨の欠損状態です。骨の吸収が縦に垂直的な場合は適応症になりますが、歯の周囲すべてといった水平的に吸収されている場合は適応症になりません。
ただし、歯槽骨が垂直に吸収されている場合でも、幅が広く欠損量が多い症例は再生が期待できない場合があります。欠損が全周囲に広がっているなど、骨の欠損範囲が広いと、薬剤がとどまらず周囲へ流れ出る可能性があるためです。
再生療法の流れ
エムドゲインやリグロス、GTR法の治療は、以下の流れで実施します。
エムドゲイン・リグロス
①歯肉を切開する
②歯根に付着したプラークや歯石、炎症している組織を除去する
③骨の欠損部分に歯周組織再生材料を塗布する
④歯肉を縫合する
GTR法
①歯肉を切開する
②歯根に付着したプラークや歯石を取り除く
③骨の欠損部分をメンブレンで覆う
④歯肉を縫合する
歯周組織の再生療法の1回の手術時間は、約1時間半~2時間ほどです。
GTR法で非吸収性の人工膜を使用した場合、取り出しが必要になるため2回手術をします。術後、約2週間で抜糸をして、月1~2回のペースで経過を観察します。術後6か月ほどで、歯周組織の再検査および再評価をして、病変が残っていると確認された場合は、追加で治療を行うことがあります。
再生療法にかかる費用
エムドゲインは自費診療、リグロスは保険適用です。
ただし、リグロスで人工膜を使う治療法を併用する場合は、保険適用外になります。GTR法は使用する人工膜の種類によって、保険適用になるか自費診療になるかが異なります。
<再生療法の平均的な費用>
エムドゲイン | 55,000~110,000円 |
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リグロス | 約20,000円(人工膜を使用する場合は、保険適用外になる) |
GTR法 | 保険適用:5,000~15,000円/自費診療:50,000~150,000円 |
再生療法の治療期間
再生療法の治療期間は、一般的に数か月~1年ほどです。歯周組織の再生スピードは個人差があるため、期間の幅が広くなります。また、治療後の通院のスケジュールによっても治療期間は異なります。
治療期間を長引かせないためには、指示された日程に受診できるようにしておきましょう。
再生療法の安全性
歯周組織の再生療法には副作用も存在します。
以下に、それぞれの治療法の安全性についてご紹介します。
<再生療法の安全性>
エムドゲイン | 使用開始から20年以上経過しているが、薬剤が原因となる副作用は報告されていない。 |
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リグロス | 成長因子の作用により強い血管新生や細胞増殖の効果があるため、がん細胞を増殖させる可能性を否定できない。 |
GTR法 | エムドゲインやリグロスに比べて術式が難しく、メンブレンが露出するリスクがある。 人工膜によってできたすき間から細菌が流入し、歯周病が悪化する可能性もある。 |
まとめ
歯周組織の再生療法は自費診療になるものもありますが、骨や歯根膜を再生することにより歯周病の悪化を抑え、歯を失うリスクを下げられます。歯周病は、予防と早期治療が重要な疾患です。再生療法には種類があり、選択によっては費用が大きく異なる場合があるため、事前に歯科医師にしっかり確認しましょう。
再生療法を検討されている方は、京都府京都市左京区にある医療法人社団 京都下鴨ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科にご相談ください。
奥村 亮司