こんにちは。京都府京都市左京区にある医療法人社団 京都下鴨ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科です。
親知らず、すなわち第三大臼歯は、成人になる頃に生える歯です。まっすぐに生えず、斜めや横向きに生えることがあります。
横向きに生えた親知らずを放置すると、さまざまなリスクが伴うため注意が必要です。
今回は、親知らずが横向きに生える原因と、放置するリスクについて詳しく解説します。
親知らずが横向きに生える原因
親知らずが横向きに生える主な原因は、顎の骨に十分なスペースがないことです。理由は、現代人の食生活と考えられています。
昔と比べて、現代人は柔らかい食べ物をよく食べるようになりました。咀嚼能力が低下し、顎の骨が発達しにくくなったのです。
しかし、歯のサイズは大きく変わっていないため、親知らずが生えるスペースが不足して横向きに生えます。詳しくは後述しますが、横向きに生えた親知らずはさまざまな問題を引き起こすため、抜歯するのが一般的です。
親知らずが正常にまっすぐ生えており痛みがない場合は、抜歯の必要はありません。
横向きに生えた親知らずを放置するリスク
横向きに生えた親知らずを放置するリスクをご紹介します。
虫歯になりやすい
横向きに生えた親知らずを放置すると、虫歯のリスクが高まります。
親知らずと隣接する第二大臼歯との間に食べかすが挟まりやすいためです。通常の歯磨きでは、食べかすを十分に除去することが困難なのです。
歯垢が蓄積しやすいので、親知らずだけでなく第二大臼歯の虫歯のリスクも増加します。
智歯周囲炎の発症リスクが高まる
横向きに生えた親知らずを放置すると、智歯周囲炎を発症するリスクもあります。
智歯周囲炎は、親知らずの周囲の歯肉に炎症が起こる病気です。歯と歯の間に詰まった細菌によって引き起こされます。
強い痛みや歯茎の腫れなどの症状が現れるでしょう。
歯並びが悪くなる可能性がある
親知らずが横向きに生えると、隣の第二大臼歯に圧力がかかります。第二大臼歯を押し続けることで、さらに前の歯にも影響を及ぼすでしょう。
歯列が後ろから押されるため、全体の歯並びが徐々に崩れる可能性があります。
横向きに生えた親知らずを抜く流れ
横向きに生えた親知らずは、まっすぐに生えた親知らずよりも処置が複雑になります。横向きに生えた親知らずを抜く流れを確認しましょう。
麻酔をする
まずは表面麻酔を行います。麻酔薬を浸した綿を、親知らずの周囲の歯茎に置いて数分間待ちます。
表面麻酔の目的は、局所麻酔の針を刺す痛みを軽減することです。表面麻酔で、歯茎の感覚が鈍くなったら局所麻酔を行います。
局所麻酔を行うことで、抜歯の際の不快感や痛みを最小限に抑えることが可能です。
歯茎を切開する
歯茎を慎重に切開し、親知らずの頭部分を露出させます。歯茎を切開する範囲をできるだけ小さくすることで、患者さまへの負担を最小限に抑えられます。
歯冠と歯根にわける
横向きに生えた親知らずは、そのままでは抜けません。歯冠と歯根に分割する必要があります。
親知らずの頭部と根の間を削って、歯を小さく分割します。歯の根を分割することもあるでしょう。
歯を分割することで、歯茎の切開を最小限に抑えながら、容易に安全に抜歯できるのです。
抜歯する
分割された親知らずを、一つずつ慎重に抜き取ります。
歯茎を縫合する
抜歯したあとは、ほぼ確実に出血します。出血は、傷口の治癒過程において重要な役割を果たす血餅(血の塊)を形成するために必要です。
血餅は傷口を保護し、自然治癒を助けるために非常に重要です。血餅が傷口から剥がれないようにするため、傷口を縫合します。
圧迫止血をする
患者さまにガーゼを噛んでもらい、圧迫止血を行います。
処方された薬剤を服用する
抜歯後、傷口の治癒を促進し感染のリスクを減らすために、抗生物質や痛み止めが処方されるのが一般的です。抜歯後の不快な症状を和らげるために、指示に従って服用してください。
親知らずを抜いたあとの注意点
親知らずの抜歯は、一般的な虫歯や歯周病治療とは異なり侵襲の大きい処置です。そのため、親知らずを抜いたあとは、さまざまなことに注意する必要があります。
血行を促進させる行為を避ける
血行がよくなると出血しやすいため、以下の行為を避けましょう。
- 激しい運動
- 長時間の入浴
- アルコールの摂取
上記の行為は、抜歯後の出血を増やす可能性があります。抜歯後の出血は時間の経過とともに落ち着きますが、落ち着くまでに血行が促進されると、腫れや痛みが強くなる、血が止まりにくくなる、傷の治りが悪くなる、炎症が起こるなどの問題につながります。
抜歯後の2~3日間は、できるだけ安静に過ごしてください。傷口の治癒を助け、合併症を防ぐことにつながります。
頻繁かつ激しいうがいはしない
親知らずを抜いたあと、うがいを頻繁に行うと血餅が剥がれて、傷の治りが遅れることがあります。抜歯後の傷口は出血しやすいですが、血が気になるからと頻繁にうがいしないでください。ブクブクうがいも避けましょう。
抜歯後24時間は、強いうがいは避けたほうがよいといえます。
傷口を触らない
親知らずを抜いた箇所が気になるかもしれませんが、舌や指で刺激することは避けましょう。出血するリスクや、縫合した糸が取れるリスクがあります。糸が取れると、傷口が開いて治癒が遅れる恐れがあります。
また、傷口が開いた状態では、ドライソケットのリスクが高まるでしょう。ドライソケットは、抜歯した箇所の骨が露出する状態で、血餅が剥がれることが原因です。食べかすや汚れが傷口に入ると、鋭い痛みを感じます。
通常、抜歯後の痛みは2〜3日で軽減します。ドライソケットになると、10日から1か月程度痛みが続くでしょう。
食事の際に鋭い痛みを感じる場合や、痛みが長く続く場合は、すぐに抜歯を行った歯科医院に相談してください。
麻酔の効果が切れるまで食事しない
親知らずを抜いたあと2~3時間は、麻酔による感覚の麻痺が残ります。血餅が形成され始める時間でもあるので、飲食物の摂取は控えることが望ましいです。
食べ物の温度がわからず火傷する、口をうまく動かせず舌や口内を噛むなど、怪我につながる可能性もあるでしょう。
食事は、歯や歯茎に負担がかからないように注意して行ってください。適した食事としては、お粥や雑炊、ヨーグルト、柔らかい麺類などが挙げられます。
また、抜歯後数日間は、治療箇所を刺激しないように反対側で噛むように心がけましょう。
腫れが長引く場合は歯科医院に連絡する
親知らずを抜いたあとに、頬の腫れが見られることがあります。腫れを軽減するためには、濡れタオルで患部を軽く冷やすことが効果的です。
冷やしすぎると血液の循環が悪くなり、腫れの回復が遅れる恐れがあるため注意してください。腫れがひどく痛みが治まらない場合は、歯科医院に相談しましょう。
喫煙を控える
親知らずを抜いたあとは、喫煙を控えてください。傷の治りを遅らせる可能性や、細菌感染のリスクを高める可能性があります。
禁煙は難しいかもしれませんが、抜歯後は傷口が完全に塞がるまで禁煙することが推奨されています。タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させて血流を悪化させるためです。傷口の治癒に必要な血液が不足し、抜歯箇所の回復が遅れます。
また、タバコは免疫力を低下させ、抜歯した箇所の細菌感染のリスクを増加させます。傷口の迅速な回復と感染症のリスク回避のためにも、親知らずの抜歯後は傷が完全に治るまで禁煙してください。
まとめ
横向きに生えた親知らずを放置すると、虫歯や智歯周囲炎、歯並びの悪化を招く恐れがあります。そのため、歯科医院で抜歯してもらうことが重要です。
横向きに生えた親知らずを抜く流れは、まっすぐに生えた親知らずとは異なります。歯茎を切開し、歯を分割してから抜去します。
激しい運動やアルコール摂取、長時間の運動は、血流を促進させ出血の増加につながるでしょう。抜歯後2~3日間は安静に過ごしてください。
特に重要なのが禁煙です。タバコは傷口の治りを遅らせるだけでなく、感染症のリスクも高めます。傷が完全に治るまでは禁煙しましょう。
抜歯後の痛みや腫れが長期間続く場合は、ドライソケットの可能性も考えられます。早めに歯科医院に相談してください。
横向きに生えた親知らずの抜歯を検討されている方は、京都府京都市左京区にある医療法人社団 京都下鴨ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科にご相談ください。
奥村 亮司