「虫歯だったところを治療してもらったはずなのにしみる」
「治療する前には何ともなかったのに、虫歯と言われて治してもらってから歯磨きするとしみる」
このような経験はありませんか?
この記事では、そのような悩みを抱えている皆さんに向けて、虫歯を治療したあとのしみる痛みについて解説します。
虫歯治療後に歯がしみる理由
虫歯治療を受けたあとに歯がしみてしまうのは、一般的によくある症状です。しかし、その原因はケースによってさまざま。
治療をした歯がしみる理由が分かれば、少し安心できますよね。ここでは、虫歯治療後に歯がしみる理由を詳しく解説します。
神経が過敏になっている
歯の神経(歯髄)は非常に敏感です。虫歯治療によって、歯の神経が過敏になり、しみやすくなることがあります。
特に、歯の神経の近くまで虫歯があった場合は、治療後に歯がしみるケースが多くなります。神経の近くの虫歯を除去する際に神経が刺激を受けるためです。
歯の構造は、外側からエナメル質・象牙質・歯髄となります。歯髄に近い虫歯の処置を行ったあとは、歯髄側へ「第三象牙質」と呼ばれる象牙質ができるのです。
第三象牙質ができるにつれ、歯髄の知覚過敏はおさまります。
治療前に神経がダメージを受けていた
虫歯が深く進行していると、治療前からすでに神経がダメージを受けている場合があります。治療後は、そのダメージにより、しみる痛みが感じられるケースがあります。
時間経過とともに「第三象牙質」ができるにつれて、しみる痛みが減っていくなら問題ありません。
しかし、しみる痛みがだんだん強くなってきたら要注意。神経の処置が必要な場合もあります。早めに歯科医院で診てもらいましょう。
一時的に歯根膜の炎症が発生している
歯の根っこ(歯根)は「歯根膜」という組織で覆われています。歯根膜は、歯根と歯を支える歯槽骨の間でクッションのような役割を担っているのです。
虫歯を器具で削るときの振動により、歯根膜に炎症が起こる場合があります。歯根膜に炎症が起きると「歯根膜炎」と呼ばれる軽い神経の炎症が起きているような症状が出るため、歯がしみやすくなります。
使用した薬剤や接着剤の影響がある
虫歯治療で使用する薬剤や接着剤などの歯科材料が、しみる原因となることがあります。以下のような原因が考えられます。
- 歯科材料の成分が歯質を通過して歯髄に到達すると、歯髄に炎症を起こし、歯がしみやすくなる
- 歯科材料がかたまるときに熱を出し、歯髄に炎症を起こすことで歯がしみやすくなる
診療の際には、なるべく歯髄に炎症を与えない薬剤や接着剤を選択し、適切に扱う必要があります。
詰め物の高さが合っていない
治療後に入れた詰め物や被せ物の高さが合っていない場合、歯がしみることがあります。
治療で詰め物や被せ物を装着した歯が周囲の歯よりも高くなっていると、噛み合わせの際に治療をした歯のみに不自然な力がかかるためです。
噛み合わせを調整することで、しみる痛みが改善する場合が多いです。ただし、噛み合わせの調整をしてもしみる痛みが消えない、または強くなってくる場合は、別の理由が考えられます。
金属の詰め物は熱を伝えやすい
金属製の詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)を入れたあとは、治療した歯がしみやすくなります。
熱の伝わりやすさを「熱伝導率」といいます。分かりやすく、コップでイメージしてみましょう。プラスチック製のコップよりも、金属製のコップのほうが熱が伝わりやすいですよね。
つまり、金属は熱伝導率が高いといえます。金属製の詰め物や被せ物を入れた歯は、熱いものや冷たいものなど、摂取したものの温度が直接神経に伝わりやすいです。これは、歯がしみる原因となります。
虫歯の治療後に歯がしみるのはいつまで続く?
虫歯の治療後に歯がしみるのは一般的だとわかっても、いつまで我慢すればよいのか悩みますよね。
「我慢しすぎるとよくないのかな?」
「痛みが強くなってきても我慢しておくべき?」
ここでは、これらの疑問に対する答えを、わかりやすく解説します。
歯がしみるのが落ち着くまでの期間
虫歯治療後に感じる歯のしみる痛みは、通常、数日から数週間で自然に軽くなっていきます。
この痛みは、特に深い虫歯の除去や、歯を削る途中に歯の神経に負担がかかることが原因で生じることが多いです。これらの治療過程で歯の組織が刺激され、一時的に敏感になるため、しみる感覚が現れます。
治療後のしみる感覚や痛みは、時間が経過するにつれて改善されることが一般的です。ほとんどの患者さんは、2週間程度で楽になることが多いです。
治療後にどれほど痛みが続いたら再受診すべき?
以下のような症状が見られる場合は、早めに歯科医師の診断を受けることが重要です。
- 痛みが強く、日常生活に影響を与える場合
- しみる痛みが数週間経っても改善しない場合
- 温かいものや冷たいものを摂取したときに、耐え難いほどの痛みを感じる場合
- 治療した歯の歯茎が腫れている、または触れると痛む場合
虫歯治療後のしみる痛みは一般的で、多くの場合は時間とともに自然に軽減します。しかし、2週間以上続く場合は再受診をしてください。
また、上記の症状に当てはまる場合は、早めに歯科医院に相談することをおすすめします。
虫歯の治療後に歯がしみるときの対処法
虫歯治療のあと、多くの患者さんが経験する「歯がしみる」感覚は、日常生活にも影響を及ぼすことがあります。
ここでは、虫歯治療後に感じる不快な症状を和らげるための対処法について、具体的にご紹介します。
市販の鎮痛剤を服用する
治療後の歯がしみる痛みが強い場合は、市販の鎮痛剤を使って痛みをとりましょう。痛みが特にひどい時は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などが効果的。
もちろん、病院で以前に処方された鎮痛剤が手元にある場合は、それを服用しても問題ありません。使用する際は、必ず用法・用量を守ってくださいね。
あまりにも痛みが強い場合は、神経の治療が必要となる場合があります。症状が改善しない場合は、お早めに歯科医師に相談ください。
血行がよくなる行為を避ける
血行がよくなると、一時的に歯の痛みが増すことがあります。歯のしみる痛みが気になるときには、血行がよくなる行為は避けるのがおすすめです。
血行がよくなる行為としては下記が挙げられます。
- 激しい運動
- 長い入浴
- 飲酒
これらの行為を治療をした当日や痛みが強いときにはできるだけ避け、安静にしてください。
治療した歯で噛まない
できるだけ、痛みのある歯では噛まないように食事をとるのがおすすめ。特にかたい食べ物や歯ごたえのあるものを噛むと痛みがひどくなる可能性があるため、避けましょう。
具体的には、以下の食べ物は避けてください。
- ナッツ類
- お肉
痛みがあるときには、やわらかい食べ物をとると痛みが軽減します。かたい食べ物は、痛みがひいてからのお楽しみにしてください。
極端な温度の飲食物を避ける
熱い飲み物や冷たい食べ物は、治療した歯がしみる原因になります。特にアイスクリームや熱いスープは、敏感になっている歯には刺激が強すぎるため、避けるようにしましょう。
実は酸性のもの、甘いものも歯がしみやすくなるので、気をつけてください。甘くて冷たい炭酸飲料を飲むと、激痛を起こすおそれがあります。痛みがあるうちは少なくとも避けましょう。
患部周囲を冷やす
歯がしみて痛いときには、痛む部分を冷やして痛みを軽減する方法が効果的です。炎症が落ち着き、痛みが和らぎます。
具体的には、冷たいタオルやアイスパックを顔の外側、特に痛みを感じる箇所に当てるのがおすすめです。
患部を冷やすことで、痛みのある部分の血流が緩やかになり、痛みと炎症が軽くなるでしょう。
ただし、冷たいものが直接しみている歯にあたると痛みが増します。冷たい飲み物は避けるようにしましょう。
マウスピースを活用する
マウスピースを使うと歯のしみる痛みが軽減する可能性があります。
歯ぎしりや食いしばりをすると、治療後の歯に余計な力がかかる場合があります。その結果、歯のしみる痛みが強くなることもあるのです。
就寝前にマウスピースを使用すれば、歯ぎしりや食いしばりから歯を保護し、痛みを軽減できます。
歯科医院で型取りをして、ご自身の歯にぴったりフィットするマウスピースをお使いになるのがおすすめです。
市販のものではフィットしづらいため、歯をしっかりと保護できないこともありますので、ご注意ください。
虫歯治療に関するよくある質問
虫歯治療を受けた後に生じる痛みや不快感について、患者さんからよくいただくご質問にお答えします。
これらのご質問は、ご自身に当てはまることもあるかもしれません。ぜひ参考にしてください。
虫歯治療後にセラミックやレジンでもしみる理由は?
セラミックやレジンは、自然な歯に非常に近い見た目を再現できる材料として人気があります。しかし、これらの材料を使用したあとに、歯がしみる場合があります。
セラミックやレジンは、金属とは違って熱伝導率が低く、歯がしみにくいといわれている材料です。
しかし、虫歯を除去する際に歯髄に近いところまで器具で削った場合は、治療後に歯がしみやすくなるケースがあります。これは、歯髄がわずかにダメージを受けるためです。
そのため、詰め物や被せ物に金属を使っても、セラミックやレジンを使っても、同じ症状がみられることがあります。
しみる痛みが強い場合や、痛みが長期間続く場合には歯科医院へご相談ください。
虫歯治療後に甘いものでもしみるのはなぜ?
虫歯治療後には冷たいものや熱いものを避けるべきだとご存知の方も多いのではないでしょうか。しかし実は、甘いものも歯がしみやすいため、避けるのがおすすめです。
歯の構造は、外側からエナメル質・象牙質・歯髄(神経)です。象牙質には細い管がたくさんあり、「象牙細管」と呼びます。この象牙細管には、液体が入っています。
そのため、甘いものをとると、唾液と混ざり砂糖水のようになるのです。
虫歯治療により象牙質が露出している部分があると、象牙細管の液体と砂糖水が触れ合います。その結果、象牙細管の液体は浸透圧の高い砂糖水へ移動しようとします。
このときに歯が「しみる」「痛い」という感覚が起こるのです。
虫歯治療後にしばらくしてから痛むときの原因は?
治療から数日または数週間後に歯が痛み始める場合、いくつかの原因が考えられます。
- 虫歯除去による刺激で歯髄がダメージを受けている
- 詰め物や被せ物の高さが高すぎて、噛むときに治療した歯に力がかかりすぎている
- 歯周病がある
- 実は周りの歯が虫歯などで痛みが出ている
数ヶ月後など長期間たったあとに痛みが出た場合は、虫歯治療をした歯が再度虫歯になっている可能性(二次う蝕)もあります。
いずれにしても、早めに歯科医院を受診してください。原因を早めに特定できることで、ご自身の不安感も取り除けます。また、歯の寿命も長くできるでしょう。
まとめ
虫歯治療後に歯がしみる原因と自宅での対処法について解説しました。虫歯を治療したあとに歯がしみるのはとてもよくあることです。
ただし、痛みが強くなる場合やしみる痛みが強く日常生活に影響を及ぼす場合は、早めに歯科医院を受診してください。
京都市左京区にある下鴨ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科では、では虫歯や歯周病予防のため定期健診をおすすめしています。できるだけ長くご自身の歯で食事がおいしくできるように、お手伝いさせていただきますので、ぜひお越しください。