こんにちは。京都府京都市左京区にある、医療法人社団 京都下鴨ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科です。
「顎がカクカクと音がする」「口を開けると痛みがでる」といった経験で困ったことがある方も多いのではないでしょうか。
今回は、顎関節症について原因から症状、治療法から予防策までわかりやすく解説していきます。
顎関節症とは
顎関節症(がくかんせつしょう)とは、顎関節や顎を動かすときに使用する筋肉である咀嚼筋(そしゃくきん)に、痛みや関節音、動作制限などが起きる病気です。痛みなどの症状が一つでもみられ、その他の病気が否定された場合に顎関節症と診断されます。
顎関節症は珍しい病気ではなく、生涯のうちに半数以上の人が経験するといわれています。
顎関節症になる原因
顎関節症を引き起こす主な原因を、以下解説していきます。
ストレス
ストレスにより、歯ぎしりや食いしばりなどが引き起こされ、顎関節や咀嚼筋に負担がかかり顎関節症につながります。
前傾姿勢や猫背
前傾姿勢や猫背が原因で、下顎が出るようになります。それによって、顎関節に負担がかかり顎関節症につながります。
噛み合わせ
噛み合わせが悪いと顎関節や咀嚼筋に無理な力が加わり、負担がかかることで、顎関節症につながります。
歯列接触癖(しれつせっしょくへき)(TCH)
TCHとは、Tooth Contacting Habitを略したもので、上下の歯を接触させる癖があることをさします。
人は通常、上下の歯は接触していない(歯と歯のすき間が2㎜程度ある)のが普通です。
しかし、TCHがあると、上下の歯が長時間接触している状態になります。それにより、咀嚼筋が疲労し、顎関節に負担がかかるため、顎関節症を引き起こしやすくなります。
歯ぎしり
歯ぎしりには、さまざまなタイプがあります。以下に解説していきます。
グライディングタイプ
上下の歯を左右に擦るタイプです。
「歯ぎしり」と聞くと、このタイプを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。「ギリギリ」と音を立てることが多く、就寝中など、無意識に動かしていることがほとんどです。
タッピングタイプ
下顎を上下に動かすタイプです。
歯をぶつけることで「カチカチ」「カンカン」と音がします。歯をぶつける強さはさまざまです。
クレンチングタイプ
歯を食いしばっているタイプです。
ストレスがかかったときや就寝中など、無意識に食いしばっていることが多いです。
ナッシングタイプ
限られた場所で歯を擦っているタイプです。こちらも就寝中に多く、一定の場所の歯がすり減っているという特徴があります。
顎関節症の症状
関節音・違和感
口を開けるときや閉めるときに、顎関節を動かすと「カクン」「コキン」という関節音が聞こえます。この関節音は、顎の関節内にあるクッションの役割をする「関節円板(かんせつえんばん)」とよばれる部分がずれることによって起こるといわれています。また、関節音と共に違和感があることも多いです。
関節音を感じる方は多いですが、基本的にそれ以外の症状がなければ治療を必要とせず、経過観察となるのが一般的です。
顎関節の痛み
口を開けるときや閉めるときに咀嚼すると、顎関節の痛みを生じます。これは、顎周辺の筋肉が疲労などの原因で凝った状態になることや炎症を引き起こしたことが原因と考えられています。
開口障害
開口障害(かいこうしょうがい)といって、口を開ける動作が難しくなります。これは、先ほど述べた、痛みによって開けられない場合や、顎を動かす機能自体が阻害されて開けられない場合があり、顎関節症の症状の中でも重症とされています。人差し指、中指、薬指の3本を縦に揃えて口に入れることができない状態です。
開口障害が起きると、食べる、話す、笑うなど、日常生活の動作にも大きく影響を及ぼします。関節円板の癒着が進むリスクがあり、早めの治療が必要です。
顎の疲れ
飲食や会話など、日常生活の動作でも、ふだんよりすぐに顎に疲れを感じます。
顎関節症の治療法
では、顎関節症にはどのような治療が行われるのでしょうか。治療法について、それぞれ解説していきます。
内服治療
内服治療は、顎関節症の痛みに対して行われます。消炎鎮痛薬(ロキソニンやカロナールなど)を用いて、痛みのコントロールを行います。
内服薬を継続してもよくならない場合は、治療の変更が検討されますので医師へ相談しましょう。
スプリント(マウスピース)治療
スプリント治療とは、就寝中に「スプリント」というマウスピースを装着し、歯ぎしりや食いしばりによる負担を軽減・分散させる治療法です。スプリントには3つ種類がありますので、それぞれ解説していきます。
前歯接触型
スタビライゼーションスプリントとよばれる、上下または上か下の前歯のみを覆う形のものです。咀嚼筋の痛みがある方に選択され、食いしばりや噛みしめによる筋肉のこわばりを軽減する目的で用いられます。
全歯列接触型
上下、または上か下の歯全体を覆う形のものです。前歯接触型の効果に加え、全ての歯に均等に接触するよう作成することにより、噛み合わせが改善される効果があります。噛み合わせが改善されることで、痛みや関節音などの症状が軽減されるでしょう。顎関節症のあるすべての方が選択できます。
下顎前方整位型
上か下の歯全体を覆う形のもので、前歯の後方に下顎を適切な位置に引っ張る誘導板があります。下顎を適切な位置に動かし、顎関節の負担軽減につながります。
理学療法
顎関節や咀嚼筋の動きをよくするために、マッサージやストレッチなどを行います。医療従事者から受けるものとセルフケアがあります。セルフケアは、間違った方法で行ってしまうと症状が悪化してしまうことがあるので、必ず医療者から指導を受け正しい方法で行ってください。
顎関節症は何科を受診すればいいの?
顎関節症が疑われる場合は、歯科口腔外科を受診するのがよいでしょう。少しでも気になる症状がある方は受診してみてください。
顎関節症は予防できる?
これまで、顎関節症の原因や治療について解説してきました。では、顎関節症を予防するにはどうしたらよいのでしょうか。
精神的ストレスの緩和
ストレスを感じると、咀嚼筋に力が入り、歯ぎしりや食いしばりに繋がります。日常的にストレスを感じているという方は、まずはストレスの原因を取りのぞく努力やストレス解消法を見つけ、食いしばりを予防しましょう。
リラックスした時間は、自然と顎関節や咀嚼筋もゆるみます。リラックスできる時間を増やすことが大切です。
セルフケア
セルフケアとして、顎周辺のストレッチを取り入れましょう。筋肉をほぐすようなイメージで、筋肉のこわばりを予防します。また、血流をよくするために、肩や首回りのストレッチも一緒に取り入れると、さらによいでしょう。ホットパックなども効果的です。
強すぎるマッサージは痛みを引きおこす原因となりますので注意してください。
生活習慣の改善
姿勢や噛み癖など、顎関節症の原因に繋がる生活習慣の改善を行いましょう。また、近年重要だとされているTCHの対策も大切です。上下の歯が触れ合っている状態は、咀嚼筋が働いている状態です。そのため、TCHにより顎関節や咀嚼筋は通常よりも疲労が溜まりやすくなります。徐々に力を抜いた状態が増えるよう意識しましょう。
生活習慣の改善は自分の意識次第で改善できることが多いため、気付いたときに行いましょう。
まとめ
これまで顎関節症について項目ごとに解説してきました。顎関節に異常をきたすと、食事や会話などのQOL(生活の質)に大きく影響を及ぼします。気になることがあれば、早めに歯科口腔外科を受診し、顎関節症の予防に努めましょう。
顎関節症でお悩みの方は、京都府京都市左京区にある医療法人社団 京都下鴨ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科にご相談ください。
奥村 亮司