こんにちは。京都府京都市左京区にある医療法人社団 京都下鴨ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科です。
歯科治療のインプラントはかなり一般的となり、歯を失ったときの治療法として多くの方が選択するようになりました。
今回は、歯科治療で行われる「インプラント治療」について、治療法だけでなく、その構造や種類について詳しく解説します。
Contents
インプラントとは?
インプラントとは、体内に埋め込まれる器具のことです。歯科治療の場合は、歯を失った場合に、顎の骨に埋め込む人工歯根のことをさします。
インプラント治療では、生体親和性の高いチタンなどの金属でできた人工歯根を直接顎の骨に埋め込む手術を行います。
インプラントの構造とは?
インプラントは「上部構造(人工歯)」「インプラント体」、上部構造とインプラント体をつなぐ「アバットメント」から成っています。以下、それぞれ解説します。
上部構造(人工歯)
上部構造とは、インプラントの上に設置される歯の頭部分のことで、外から見え、被せ物にあたる箇所です。材料は、審美的で強度のあるセラミックやジルコニアが使われることが多いです。
特徴は、天然の歯と同じような色調を表現できるため、人工歯だと気づかれにくいのことでしょう。強く噛み締める方や歯ぎしりする方には金属が使われることがあります。
インプラント体
インプラント体は、顎の骨に埋め込む人工歯根の部分のことです。生体親和性の高いチタンまたはチタン合金が使われることが多いです。
インプラント体は、直径3~5mm程度と幅があり、長さも6~18mmとさまざまな種類があります。インプラントを埋め込む場所・顎の骨の厚みなどによって使い分けます。
アバットメント
アバットメントとは、上部構造とインプラント体を接続するパーツのことです。インプラント体の上部に取りつけ、その上に上部構造である人工歯を取りつけて完成となります。
アバットメントはさまざまな種類があり、歯肉の厚さやインプラント体の埋入角度などで決定されます。
インプラントの種類と素材
インプラントはさまざまなメーカーから発売されており、日本では約20種類のものが発売されています。また、世界では100以上のインプラントメーカーがあり、より安全で長持ちする材質や形状が常に開発されているので、数年後には材質や形状がアップデートされていることでしょう。
以下、現在広く使われているインプラントの種類や材質について解説します。
インプラントのつくり
インプラントのつくりは、大きくわけて「ワンピースタイプ」と「ツーピースタイプ」にわかれます。
- ワンピースタイプ
アバットメントとインプラント体が一体型のタイプです。治療の回数が1回少なくて済み、金額もツーピースタイプより安くなります。
強度に優れていますが、顎の骨の厚みが十分にある方でないと適応できません。また、アバットメントにトラブルが発生した場合、インプラント体ごと除去しなくてはいけません。
- ツーピースタイプ
一般的なインプラントはツーピースタイプで、アバットメントとインプラント体がわかれています。顎の厚みが多少薄くても適応できるため、ツーピースタイプのほうが主流といえるでしょう。
また、ツーピースタイプは、インプラントが強い衝撃を受けた場合でも、インプラント体が直接ダメージを受けにくくなっています。手術の回数は、ワンピースタイプよりも一工程多くなり、費用も高くなります。
インプラント体の形状
インプラント体の形状は、大きくわけて「スクリュータイプ」と「シリンダータイプ」があります。現在のインプラント治療で使用されているのは、ほとんどがスクリュータイプです。
- スクリュータイプ
ネジのような形状のインプラント体です。ネジを埋め込むのと同じ要領で顎骨に埋入していくので、固定しやすく安定しています。
- シリンダータイプ
円筒状のインプラント体です。スクリュータイプのような切れ込みはありません。ハンマーのように打ちつけて埋入します。
スクリュータイプよりも表面積が小さいため、顎骨との結合が弱くなります。
インプラントの素材
インプラント体の材質は、純チタンかチタン合金の2種類です。チタンは生体親和性が高く、骨との結合も強いので、インプラント体に適した素材です。
また、金属アレルギー反応を起こしにくい、腐食しにくいという特徴があります。チタンは金属アレルギー反応を起こしにくいですが、心配な方は、事前に検査をしたうえでインプラント治療をしましょう。
インプラントのメリットとデメリット
どのような治療であっても、メリットとデメリットが存在します。メリットのように感じることが、人によってはデメリットになることもあります。双方を理解したうえで、担当の歯科医師とよく相談し、ご自身に合った方法を選択しましょう。
インプラントのメリット
インプラントのメリットは、なんといっても、ご自身の歯のように使えることでしょう。インプラントには、ほかにも多くのメリットがあります。詳しく解説します。
自分の歯のように使える
インプラントは、ご自身の歯と同じような感覚で噛むことができます。
歯を失ってしまった場合の治療法に取り外し式の「入れ歯」がありますが、入れ歯の場合は、粘膜の上に入れ歯がのる形となるので、どうしても異物感や違和感が残り、ご自身の歯と同じように噛むことができません。
一方、インプラントは、顎骨に直接埋め込み、インプラント体がしっかり骨と結合した状態になるため、ご自身の歯と同じような感覚で噛むことができるのです。
審美的に優れている
インプラントは、人工歯部分にセラミックやジルコニアなど、自然の歯と同じような見た目の素材を使うことができます。
入れ歯の場合は、固定用の金具がみえることがありますが、インプラントは顎骨にしっかり固定されているため、外からみえる心配がありません。
周囲の健康な歯に影響を与えないで済む
歯を失った場合の治療法として「ブリッジ」があります。ブリッジの場合は、両隣の歯を支えにして橋渡しするように長い被せ物をするため、両隣の歯を削る必要があります。さらに、使用している間は、両隣の歯に負担がかかるでしょう。
一方、インプラントは、周囲の歯を削る必要がなく、過度な負担がかかることもありません。残っている歯の寿命をのばすことにもつながります。
骨が薄くなるのを防ぐことができる
歯を失うと、歯があった部分の顎の骨は次第に薄くなります。入れ歯やブリッジの場合も同様です。
しかし、インプラントは顎骨に直接インプラント体を埋め込むため、刺激が直に骨に伝わり、骨が薄くなるのを防ぐことができます。
インプラントのデメリット
メリットの多いインプラント治療ですが、デメリットもあります。インプラントのデメリットは、以下のとおりです。
治療費用が高額となる
インプラントは、保険が適用されないため高額となります。お口の状況によって異なりますが、1本あたり30万円程度からと考えましょう。歯科医院ごとに金額設定が異なるので、治療を希望する場合はご確認ください。
例外として、先天的に顎の骨に異常がある場合などは、保険が適用されることがあります。その場合は、総合病院などの口腔外科で相談や治療を行います。
治療期間が長くなる
インプラントは、一般的な歯科治療よりも治療期間が長くなります。
手術が必要なだけでなく、インプラント体が骨と結合するのを待つ時間も必要です。
手術が必要となる
インプラントは、外科的な手術が必要です。
手術の痛みは麻酔で軽減されますが、身体に負担がかかることに変わりません。持病があり服薬している場合などは、手術が行えないこともあるので、必ず歯科医師にご相談ください。
術後のメンテナンスが必要となる
インプラントは、一度入れれば一生ものというわけではありません。汚れが溜まると「インプラント周囲炎」という歯周病のような状態となってしまうことがあります。ひどい場合は、インプラントを取りのぞかなければなりません。インプラント周囲炎にならないように、定期的にメンテナンスを受けましょう。
ただし、自然の歯の場合でも定期検診は必要です。健康な歯を保つために、定期的な通院は必要不可欠といえるでしょう。
インプラント治療の流れ
基本的なインプラント治療の流れは、以下のとおりです(それぞれの工程期間は、お口の中の状態や手術後の治癒状態により異なります)。
1.問診とカウンセリング
最初に問診とカウンセリングを行います。
インプラント治療への疑問点や不安を解消できるよう、しっかりと歯科医師とコミュニケーションをとりましょう。手術や費用に対する不安なども、治療が進む前にしっかり確認しましょう。
2.術前診査と治療計画
歯科用CTなどを使ってインプラント治療に必要な資料を集め、資料結果をもとに治療計画を立てます。
治療にかかる期間や回数などは患者さまごとに異なります。歯科医師に治療計画の内容をしっかり聞いて、疑問点があれば確認しましょう。
3.インプラント埋入手術
インプラント埋入手術は、1回法と2回法があります。以下、それぞれ解説します。
- 1回法
インプラント体の埋入とアバットメントの装着を同時に行います。アバットメントの上部が少し歯茎から出た状態で縫い合わせ、3~6か月程度の安静期間を経て、上部構造を取りつけます。
手術が1回で済むため、患者さまの負担が少ないです。
ただし、管理をしっかり行わないと、インプラント体が骨と結合する前に細菌感染を引き起こすリスクがあります。インプラント周囲の骨が不足していて「骨造成」をするケースでは、細菌感染のリスクが高くなるため、2回法を選択することが多いです。
- 2回法
インプラント体を顎の骨に埋入したら、一旦歯茎を縫い合わせ、安静期間を設けます。安静期間を経たあと、再び歯茎を切ってアバットメントを装着します。2回の手術となるので、患者さまの負担は大きくなりますが、術後の細菌感染リスクが低くなるメリットがあります。
4.人工歯の装着
アバットメントまで装着している状態で、人工歯を作るための型取りをし、人工歯の作製・装着を行います。
5.術後の健診とメンテナンス
インプラントの固定状態や噛み合わせの不具合などを確認します。また、周囲の汚れを取りのぞいて、口内を衛生的に保てるようにします。
インプラント治療の注意点
インプラント治療は外科手術です。そのため、全身状態や口腔内状態によってリスクがあると判断された場合は、治療を行うことができません。既往歴や服薬状況、全身状態は歯科医師に正しく伝えましょう。
また、顎の成長がまだ止まっていない未成年は、顎の成長が止まる20歳前後まで待ちましょう。
インプラント治療してはいけない疾患とは
インプラント治療してはいけない疾患は、以下のとおりです。
- 免疫不全
- 放射線治療が必要な疾患
- 白血病などの血液疾患
- チタンアレルギー
上記の疾患がある場合、インプラント治療はできません。
インプラント治療に注意が必要な疾患
インプラント治療に注意が必要な疾患は、以下のとおりです。
- 高血圧
- 糖尿病
- 骨粗鬆症
- 心疾患
上記の疾患がある場合、インプラント治療に限らず、外科治療に注意しなくてはいけません。飲んでいる薬や現在の病気の状態など、内科の主治医と相談する必要があります。状況によってはリスクが高すぎるため、インプラント治療はできません。
インプラントのメンテナンス方法
インプラントを入れたあとは、違和感や不具合がなくてもメンテナンスを受けましょう。
歯科医院では定期的にレントゲンなどで術後の状態をチェックし、クリーニングやブラッシング指導を行います。通院頻度は3~6か月に1回程度になることが多く、1回のメンテナンスでかかる費用は、5,000~10,000円程度です。通院頻度や費用はお口の状況によって異なるので、ご自身の最適な通院頻度を確認しましょう。
健康診断と同じで、メンテナンスはどこで終わりということはありません。健康な状態を保つためには、継続して通院する必要があります。
まとめ
今回は、インプラント治療の構造や種類、治療方法まで詳しく解説しました。
インプラント治療はメリットの多い治療法ですが、手術があるため不安を感じる方も多いでしょう。インプラント治療に疑問や不安がある場合は、治療前のカウンセリングなどでしっかり解決してから治療するのがよいでしょう。
インプラントを検討されている方は、京都府京都市左京区にある医療法人社団 京都下鴨ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科にご相談ください。
奥村 亮司