こんにちは。京都府京都市左京区にある医療法人社団 京都下鴨ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科です。
「歯肉炎」という言葉は馴染みがなく、どんな病気かわからない方も多いのではないでしょうか。
今回は、歯肉炎の症状や原因、治療法などを詳しく解説します。歯肉炎は放置すると歯の損失や重大な病気などにつながりますが、日々の行動で予防が可能です。本記事を参考に歯肉炎についての理解を深め、正しい予防法を実践して健康な口内環境を保ちましょう。
Contents
歯肉炎とは
歯肉炎は、歯茎に炎症が起きることで、赤く腫れたり出血したりするなどの症状があらわれる病気です。痛みなどの自覚症状がほとんどないため、気づかないことも多いです。
しかし、歯肉炎は、歯周病の初期の状態のため放置すると歯周炎に進みます。日々の歯磨きの際に、歯茎の状態や出血の有無を確認し、歯肉炎の段階で治療を開始しましょう。
歯周炎とは
歯肉炎は、初期の歯周病に分類されますが、歯周炎は中程度以上の歯周病とされています。歯周炎は、炎症が歯茎を超えて歯を支える顎の骨まで広がった状態です。歯茎の腫れ、膿が出る、歯がぐらついて抜けるなどの症状があらわれます。
健康な歯を失う可能性もあるため、歯肉炎の段階で治療し、重症化を防ぐことが重要です。
歯肉炎の症状
歯肉炎の主な症状は、以下の3つです。
- 歯茎の腫れ
- 歯茎の赤み
- 歯磨きの際の出血
歯肉炎は、歯茎がぷっくりと腫れ、紫がかった赤色の状態になります。歯磨きをしたときやフロスを通したとき、硬いものを噛んだときに出血することも特徴です。
痛みなどの自覚症状に乏しいため、歯科医院を受診しない間に症状が進行する場合があります。大したことはないと見過ごされることが多いですが、痛みが出る頃には歯を支える骨が溶かされ、歯がグラグラしていることもあるため、初期の段階で治療を行うことが大切です。
健康な歯茎と歯肉炎の歯茎の比較
健康な歯茎の状態を参考に、自分の歯茎の状態をチェックしましょう。
歯茎の状態を表にまとめました。
<健康な歯茎と歯肉炎の歯茎の比較>
状態 | 健康な歯茎 | 歯肉炎の歯茎 |
---|---|---|
色調 | 薄いピンク | 紫がかった赤 |
状態 | キュッと引き締まっている | ぷっくりと腫れている |
形 | 歯と歯の間の歯茎が三角形になっている | 歯と歯の間の歯茎が腫れ丸みを帯びている |
感触 | 指先で触ると少し硬く弾力がある | ぶよぶよして弾力がない |
健康な歯茎では、スティップリングといわれる、みかんの皮のようなプツプツしたくぼみがみられます。歯茎の繊維が表面を引っ張ることで現れるもので、歯茎に張りがある証拠です。歯肉炎になると徐々にスティップリングがみえなくなるため、歯茎の健康状態の指標になるでしょう。
自分の歯茎の状態が歯肉炎の状態に近い場合は、毎日の歯磨きを丁寧に行い、歯科医院を受診してクリーニングを受け、症状の進行を防止しましょう。
歯肉炎の原因
歯肉炎の原因は、以下の4つです。
- 歯垢
- ドライマウス
- ホルモンバランスの変化
- ビタミン不足
それぞれ解説します。
歯垢
歯肉炎の主な原因は、プラークとよばれる歯垢が蓄積されることです。不十分な歯磨きにより口の中が不衛生になると、歯垢を栄養源とする歯周病菌が増殖し、歯茎の腫れや出血を引き起こします。
歯垢は、歯と歯の間や歯と歯茎の境目にたまりやすいため、すみずみまで意識して歯磨きをすることが大切です。特に、歯並びが悪い方や治療後の被せ物が入っている方は、歯磨きが不十分になりやすいです。念入りに歯磨きを行いましょう。
歯垢は食後8時間程度で形成されるため、食後に欠かさず歯磨きを行うことで、歯垢の蓄積を防止できます。また、赤ちゃんの口の中には歯周病菌は存在せず、スプーンや箸、お皿などを保護者と共有することで感染します。大切なこどもを守るためにも、周囲の大人が口の中を清潔に保つことが重要です。
ドライマウス
唾液の分泌量が低下し口の中が乾燥するドライマウスも、歯肉炎の原因です。
唾液は殺菌効果をもつため、唾液の分泌量が減少すると口の中の細菌が増殖します。細菌が増殖すると、歯肉炎が発生するリスクが高まるでしょう。ドライマウスは、ストレスや喫煙、過度の飲酒、加齢などによって起こります。
ホルモンバランスの変化
女性は、男性よりも歯肉炎にかかりやすい傾向があります。妊娠によりホルモンバランスが変化すると、歯肉炎のもととなる菌が増殖しやすくなるのです。つわりや疲労感によって歯磨きが不十分になることもあるため、妊娠中の女性は歯肉炎になるリスクが高まります。
つわりで歯磨きが難しい場合は、気分が落ち着いているときに歯磨きをする、マウスウォッシュやデンタルフロスを利用するなど、口の中を清潔に保ちましょう。妊産婦歯科検診を実施している自治体もありますので、歯科検診を受け、ご自身と生まれてくる赤ちゃんのために口の中の状態を良好に保ちましょう。
ビタミン不足
ビタミン不足が歯肉炎の原因となることがあります。
ビタミンCが欠乏すると歯茎が出血を起こしやすくなり、ナイアシンが欠乏すると炎症が起きやすくなります。ビタミン不足による歯肉炎を予防するために、日頃の食事で新鮮な野菜や果物を取り入れ、バランスのよい食生活を心がけましょう。
歯肉炎の治療法
歯肉炎の主な治療方法は、以下の2つです。
- 歯科医院でのクリーニング
- 自宅でのセルフケア
歯科医院での治療と自宅でのセルフケアを行うことで、2~3週間程度で症状が改善される場合があります。以下、それぞれの治療方法を詳しく解説します。
歯科医院でのクリーニング
歯科医院でクリーニングを受けることで、セルフケアでは取り除くことが難しい歯石の除去が可能です。
歯に残った歯垢は3日ほどで歯石に変化し、硬くなります。歯石が硬くなると、歯磨きで除去することは難しいため、歯科医院での専門的なクリーニングが必要です。歯石はザラザラしており、歯垢が付着しやすいです。そのため、歯科医院で歯石や歯周ポケットに溜まった歯垢・細菌を除去してもらいましょう。
自宅でのセルフケア
歯肉炎の原因となる歯垢をきれいに除去するために、歯磨きの方法を改善しましょう。
歯磨きの際は、歯ブラシの先端を、歯と歯の間のすき間にある三角形に当てるイメージで行ってください。歯ブラシの先端を歯茎に対して斜めに当て、やさしく小刻みに動かすことがポイントです。デンタルフロスや歯間ブラシを併用しながら、歯と歯の間の歯垢も除去しましょう。マウスウォッシュには、抗菌作用や殺菌作用のある成分が含まれていることが多いため、歯垢の除去や口臭の改善が期待できます。歯科医院では歯磨き指導も受けられるため、受診の際に気軽に相談してください。
歯肉炎の予防法
歯肉炎の予防法は、以下の3つです。
- 毎日丁寧に歯磨きする
- 唾液の分泌を促す
- 生活習慣を改善する
それぞれ詳しく解説します。
毎日丁寧に歯磨きする
歯肉炎は、毎日の歯磨きで歯垢を落とすことや歯茎をマッサージして血流をよくすることで予防可能です。
歯肉炎には、バス法という歯磨きの方法が向いています。バス法とは、歯ブラシの毛先を歯と歯茎の境目に斜め45度に当てて歯を磨く方法です。小刻みにやさしくブラッシングすることで、歯周ポケットの中の汚れを除去できます。歯茎をマッサージする効果もあるため、歯茎の抵抗力を高め、細胞の入れ替わりを促進します。
しかし、バス法では、歯と歯の間の歯垢は除去できません。歯ブラシを歯に対して90度に当てるスクラビング法や、歯間ブラシ、マウスウォッシュなどを併用して、むらなく歯垢を落としましょう。
さらに、3~6か月に一度を目安に定期健診を受診し、歯科医院でのクリーニングも受けるのが理想的です。
唾液の分泌を促す
唾液には、殺菌作用や食べかすなどの汚れ・細菌を洗い流す自浄作用があります。唾液の分泌量を増やすことは、歯肉炎の予防につながるのです。
みらいクリニックの今井一彰院長が考案した口の体操「あいうべ体操」は、唾液腺を刺激して、唾液の分泌量を増やす効果が期待できます。あいうべ体操のやり方は、以下を参考にしてください。
- 「あー」と口を大きく開けて1秒キープする
- 「いー」と口を横に広げて1秒キープする
- 「うー」と口をすぼめて1秒キープする
- 「べー」と舌を出し1秒キープする
1~4の行程を10回×1セットとして1日3回程度行うと、唾液の分泌量を増やす効果が期待できます。また、噛み応えのある食べ物やキシリトールガムを噛むことも効果があるでしょう。あいうべ体操の実施や噛む回数を増やすなど、唾液の分泌量を増やして歯肉炎を予防しましょう。
生活習慣を改善する
歯肉炎の予防のために、体の免疫力を高める必要があります。
免疫力が低下していると体に侵入する細菌と戦えず、歯肉炎になりやすいです。免疫力を高めるには、十分な睡眠やストレス発散、バランスのよい食事、適度な運動などが有効です。喫煙は免疫力を低下させ、唾液の分泌量を減少させるため、控えましょう。
歯肉炎を放置するリスク
歯肉炎は自覚症状の乏しさから、受診するほどではないと見過ごされることが多いです。
しかし、放置するリスクは健康な歯を失うだけではありません。歯肉炎を放置するリスクは、以下のとおりです。
- 脳梗塞や心筋梗塞になる
- 誤嚥性肺炎になる
- 早産、低出生体重児につながる
歯周病菌が血管に侵入すると、心臓や脳の血管を詰まらせることが明らかになっています。咳をしたときなど、口の中の歯周病菌が気管に侵入すると、誤嚥性肺炎を起こす可能性があります。また、妊娠中の方が歯肉炎を悪化させると、早産や低出生体重児のリスクがまったくないわけではありません。
口の中の衛生状態は全身に影響を及ぼすため、早期の治療や日頃の予防が大切です。
まとめ
今回は、歯肉炎の症状や原因、治療法などを解説しました。
歯肉炎は初期の歯周病で、悪化すると歯周炎へと進行します。最悪の場合、歯が抜け落ちるだけでなく、全身の健康状態に影響を及ぼすため、早期に治療することが大切です。歯肉炎の症状には、歯茎の腫れや赤み、歯磨きの際の出血が挙げられますが、痛みなどの自覚症状は乏しいので注意してください。
歯肉炎の主な原因は、不十分な歯磨きによる歯垢の蓄積です。毎日の丁寧な歯磨きで歯垢を除去し、予防に努めましょう。歯肉炎の予防には、バス法で歯磨きを行うことや、歯間ブラシ・マウスウォッシュを使用することが効果的です。
歯肉炎は誰もがなりうる病気ですが、放置すると取り返しのつかない事態になる可能性があります。歯科医院でのクリーニングや自宅でのセルフケアにより改善が期待できるため、早い段階で対策を行い、歯肉炎を予防しましょう。
歯肉炎の予防・治療を検討されている方は、京都府京都市左京区にある医療法人社団 京都下鴨ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科にご相談ください。
奥村 亮司